こんにちは、Customer Engineerの島本です！
こないだ同僚とランしてサウナでととのう「ととけん」に行ってきたのですが、隅田川沿いをランニングした後のサウナは最高でした！その後、なんてことない中華屋で食べた麻婆茄子もおいしかったです。

さて、マーケティング活動を行う上で、獲得した見込み客（リード）の情報を一元管理して、メールなどの様々なチャネルを通したコミュニケーションで育成し、商談に引き上げるためにMAツール利用していると思いますが、「MAツールで管理しているリード情報をリアルタイムに連携してKARTE で活用したいな」と思ったことはありませんか？

例えば次のようなケースです。

有効なリードに対してはサイトで問い合わせした後に特別な接客を表示させたい
過去に商談化したものの失注したリードが再来訪した時に社内Slackに通知したい

BtoB においては、SFAやCRM ツールと連携することにより、商談化した以降の情報もMAツールに同期することができるため、リード情報を活用することでより効果的なアプローチを取ることができます。

今回はBtoB でよく利用されている「Account Engagement（旧 Pardot）から取得したプロスペクト情報を KARTE にイベント送信する」方法について紹介します。

アウトプットイメージ

Account Engagement のプロスペクトの項目をKARTE のイベントとして送信するように実装しました。
ユーザーストーリー.jpg

処理の流れ

全体の処理の流れは、次の通りです。

接客サービス機能とCraft Functionsの連携では、次の2つの機能を利用します。

サーバーサイドアクショントリガー
- Craft 用接客アクションの実行をきっかけにFunctionを実行する
API v2 の Send event to KARTE API
- イベントを API 経由で KARTE に送信し、ユーザーの解析に利用する

実装手順

大きく分けてSalesforce 側と KARTE 側のそれぞれの設定があります。
前提、Salesforce 側の設定については、Account Engagement の権限セットが割り当てられていて、システム管理者権限が付与されている（API の有効化に✔がついている）Salesforce アカウントで行ってください。

実装の手順は次の通りです。

Salesforce の接続アプリケーションを作成する
Salesforce のセキュリティトークンを取得する
Account Engagement のビジネスユニットIDを確認する
Account Engagement のアカウントID を確認する
Account Engagement の cookie 取得用接客を作成する
Craft 用接客を作成する
API v2 アプリを作成する
必要な項目を Craft Secret Manager に登録する

API v2 アプリのアクセストークン
Salesforce のユーザー名とセキュリティトークンを付加したパスワード
接続アプリケーションのコンシューマー鍵とコンシューマーの秘密
Account Engagement のビジネスユニットID

取得するプロスペクト項目を決定する
Craft Functions を作成する

順番に見てみましょう。

1. Salesforce の接続アプリケーションを作成する

まず、Account Engagement API へのアクセスにSalesforce のユーザ名パスワード OAuth 認証フローを使用するため、Salesforce 側で接続アプリケーションを作成します。

[ 設定 > アプリケーションマネージャー ]から新規接続アプリケーションをクリック
必要事項を入力して保存

設定内容	値
接続アプリケーション名	任意の名称
API参照名	デフォルトでは接続アプリケーション名と同じ
取引先責任者メール	任意のメールアドレス
OAuth 設定の有効化	ON
コールバック URL	任意のURL
選択した OAuth 範囲	Pardot サービスを管理 (pardot_api)
Web サーバーフローの秘密が必要	ON

作成した接続アプリケーションを参照し、コンシューマの詳細を管理をクリック
画面に表示されたコンシューマ鍵とコンシューマの秘密を控えておく

2. Salesforce のセキュリティトークンを取得する

接続アプリケーションの作成が完了したら、OAuth 認証フローに必要なセキュリティトークンを取得します。

[ 設定 > 私のセキュリティトークンのリセット ]からセキュリティトークンのリセットをクリック
Salesforce 個人設定のメールアドレスに新しいセキュリティトークンがメールで送信されるため控えておく

3. Account Engagement のビジネスユニットIDを確認する

次に、 Account Engagement のビジターとプロスペクト情報を取得する際に必要なビジネスユニットIDを確認して、手元に控えておきます。

[ マーケティング設定 > ビジネスユニット設定 ]で表示されるビジネスユニットIDを控えておく

4. Account Engagement のアカウントIDを確認する

Account Engagement の cookie 情報を取得するのに必要なアカウントIDを確認します。
以下どちらかの方法でアカウントIDを確認してください。

pi.pardot.com の場合:
- ページの右上にあるギアアイコンを使用して [設定] に移動
- [アカウント] タブで、アカウント ID（ビジネスユニット ID）を確認
Account Engagement Lightning アプリケーションの場合:
- アプリケーションランチャーからAccount Engagement を選択
- [Account Engagement 設定] タブをクリック
- 左側で [アカウント設定] をクリックして、アカウント ID（ビジネスユニット ID）を確認

3.のステップで控えたビジネスユニット IDとはIDが異なる可能性があるため、手元に控える際には区別できるようにしてください。

ここまでがSalesforce 側の設定となります。次からKARTE 側の設定になります。

Account Engagement のトラッキングコードから生成される cookie 情報を取得するための接客を作成します。

接客サービス画面を開く
[スクリプト] Cookieから情報を取得するテンプレートを利用してアクションを追加

次のようにcookie 取得用接客の設定を行います。

「アクション」
- 配信率: 100%
  - ※ アクションの中身の設定については後述
「対象ユーザー」
- 全員
- ディメンションの追加: 「セッション内のPV数」を「2未満」を指定
  - ※ 対象ユーザーを絞りたい場合は、条件を指定します
  - ※ 検証中はテスト配信用のセグメントを設定してください
「対象イベント」
- 全てのページ
  - ※ 配信するページを絞りたい場合は、条件を指定します
「オプション」
- 同時配信: OK
保存をする

次に、接客サービスに登録したアクションの設定をしていきます。

「アクション設定」を埋めていく
- 「cookie名（自ドメインのみ）」
  - visitor_idと4.で控えたアカウントIDを結合した値を設定
- 「KARTEで発生させるイベント名」
  - イベント名は ae_cookieで設定
保存をする

以上で、Account Engagement の cookie 情報を取得する設定が完了しました。

6. Craft 用接客を作成する

Functionをトリガーする条件を指定するための接客サービスを作成します。

接客サービス画面を開く
Craft Functions連携 テンプレートを利用してアクションを追加
- ※ テンプレートが表示されない場合は、Craftの利用申請が必要です

スクリーンショット2023-07-2415.09.18.png

今回は、Account Engagement の cookie 情報を取得したことをきっかけにFunction をトリガーするため、次のようにCraft 接客の配信設定を行います。

「アクション」
- 配信率: 100%
  - ※ アクションの中身の設定については後述
「対象ユーザー」
- 全員
  - ※ 対象ユーザーを絞りたい場合は、条件を指定します
  - ※ 検証中はテスト配信用のセグメントを設定してください
「対象イベント」
- 「Account Engagement の cookie 情報を取得した」という条件になるように配信トリガーを以下のとおりに設定
  - ae_cookie > visitor_idxxxxxx > 存在する
- 配信頻度: アクション毎
「オプション」
- 同時配信: OK
保存をする

次に、接客サービスに登録したアクションの設定をしていきます。ここで設定した内容がCraft Functions 側に渡されます。

cookie 取得用接客で取得した cookie 情報は「ユーザー情報変数」で接客サービス内に埋め込むことができます。また、KARTE内であらかじめ定義された変数が用意されているため、ae_cookie とvisitor_id をCraft Functions 側に渡す設定を行います。

「アクション設定」を埋めていく
- 「ファンクション名」
  - トリガーしたいFunctionの名称（今回の例では accountengagement-connect ）を設定
- 「name」
  - 今回は利用しないので「ファンクション名」と同じ値を設定
- 「data」
  - JSONでae_cookie とvisitor_idを設定

{ 
  "ae_cookie": "#{ae_cookie}" ,
  "visitor_id": "#{visitor_id}"
}

「データ管理」をクリック
- ユーザー情報変数を次のとおりに設定
  - 変数名：ae_cookie
    - すべての期間 > ae_cookie > visitor_idxxxxxx > 最新の値
保存する

以上で、Account Engagement の cookie 情報を取得したタイミングで、Craft Functions 側にcookie 情報とvisitor_id を渡す設定が完了しました。

7. API v2 アプリを作成する

API 経由で KARTE にイベントを送信するための設定を進めていきます。
まずは、Send event to KARTE API を利用するためのAPI v2アプリを作成します。
スクリーンショット2023-11-011.07.05.png

[ストア > API v2設定] からアプリを新規作成
[アプリタイプ] を token に設定
必要なscopeを追加
- track.event.write: KARTE にイベントを送信するのに必要
アプリを保存し、一度だけ表示されるアクセストークンを控えておく

「アプリタイプ」は後から変更できないため、誤って作成した場合は、アプリを再度作成し直してください。

8. 必要な項目を Craft Secret Manager に登録する

手元に控えておいた以下項目を Craft Secret Manager のシークレットとして登録します。それにより、秘匿すべきアクセストークンをファンクション上に直接記述する必要が無くなります。

API v2 アプリのアクセストークン
Salesforce のユーザー名
Salesforce の「パスワード」の文字列に、「セキュリティトークン」を結合したもの
接続アプリケーションのコンシューマー鍵
接続アプリケーションのコンシューマーの秘密
Account Engagement のビジネスユニットID

スクリーンショット2023-07-2515.15.11.png

[Craft > シークレット] からシークレットを新規作成
控えておいた上記を貼り付けて、適当な名前を付けて保存

作成したシークレットの名前は、最後に作成するCraft Functions の変数の値に記載します。

9. 取得するプロスペクト項目を決定する

Account Engagement API のドキュメントを参考に、取得するプロスペクト項目のField を決めます。
※ 最新の version のドキュメントを確認してください。

今回は以下 Field を取得します。

Field名	説明
salesforceId	オブジェクトの Salesforce ID
company	見込み客の会社名
department	見込み客の部門名
jobTitle	見込み客の役職

KARTE では個人情報に該当する、あるいは該当する可能性のある情報についてはユーザータグ（identifyイベント）で連携を統一することを推奨しているため、該当する Field名は含めないでください。

10. Craft Functions を作成する

Account Engagement から取得したプロスペクト情報を KARTE にイベント送信するためのCraft Functions のファンクションを作成します。このコードは Craft Functions のテンプレートとして公開しています。

実装内容は、次のとおりです。

Craft 接客からAccount Engagement の cookie 情報と visitor_id を受け取る
cookie 情報を元に prospect_id を問い合わせる
取得した prospect_id を元にリード情報を問い合わせる
ユーザーに対してAPI v2 を使ってイベントを送信する

Craft Functions 作成画面のcode にサンプルコードのindex.js の内容を貼り付け、modules に modules.json の内容を貼り付けます。変数の値には以下を設定してください。

送信するイベント名
- ユーザーに対して送信するイベント名を指定する
- イベントには使用できないイベント名があるためサポートサイトを参考にしてください
シークレット名
- Craft Secret Manager に登録したSecret名を貼り付ける
取得するプロスペクト項目名
- Field 名が複数ある場合はカンマで結合した値を入力してください

これで、ユーザーがサイトに来訪した際にファンクションが実行され、Account Engagement から取得したプロスペクト情報を KARTE にイベント送信する設定が完了しました。

なお、サンプルコードではリトライ処理が実装されていないですが、必要であれば下記ブログ記事を参考に組み込んでみてください！
Webhook接客をファンクションの再実行機能で再実装しました！

実際に動かしてみる

では、実際に動かしてみましょう！！

まず、ユーザーが特定のページを閲覧します。
そのユーザーのユーザーストーリーを見ると、Craft 用接客が配信された後にCraft functions から「sync_ae_craft」イベントが送信されていることが確認できます。
ユーザーストーリー3.png

イベントのフィールドを見てみると、指定した項目が取得できていることが確認できました。
ユーザーストーリー2..png

（※ KARTE ではイベントのライフサイクルが導入され、新規に送信されたカスタムイベントは、対応未設定のイベントとして扱われます。これらのイベントの挙動は暫定的に「解析しない」と同じ状態になっているため、こちらのサポートサイトの状態の変更方法を参考に、イベントの用途に応じた状態を設定してください。）

おわりに

今回はAccount Engagement から取得したプロスペクト情報を KARTE にイベント送信する方法を紹介しました。

リード情報に関して、冒頭記載した通りSFAやCRM ツールと連携することにより、商談化した以降の情報も活用できるのに加え、MA ツール側でスコアリング機能を利用している場合はそのデータを活用することもできるため、見込み客の温度感が高まった瞬間をリアルタイムに捉えて効果的なアプローチも可能です！

ぜひ皆さんも、試してみてください！

ちなみに、PLAID でもKARTE を使ってマーケティング活動を行っているため、BtoB SaaSのマーケティングに興味のある方はぜひこちらもご覧ください。
PLAID Marketing note

プレイドでは、世の中にインパクトを与える新しいソリューションを一緒につくる仲間を募集しています！
ぜひ気軽にお問い合わせください。

↓ パートナー企業になりたい

CustomerData-Driven Solution を一緒に創りませんか？ | PLAID Ecosystem

↓ PLAIDで働きたい