こんにちは、Customer Engineerの神谷です！この前、大好きなラーメン屋で使っていて気になった、鮎魚醤を買ってみました。魚醤と言えば、日本のしょっつるやいしり、タイのナンプラーなどが有名ですが、どれも少しクセがあります。しかし鮎魚醤にはクセがなく、普通の醤油の代わりにTKGに使ったり、オイルベースのパスタのような、素材の良さを活かす料理にピッタリですね。

さて今回は、Craft FunctionsからGoogle Analytics Data APIを利用して、GA4のユーザーセグメント分析レポートを作成する方法をご紹介します。以前こちらの記事でも触れたように、Webサイトのデータ分析のため、GA4は殆どの企業や組織で導入されているかと思います。ただ、GA4は多機能な分、使いこなすのもなかなか難しく、活用及びそこからのWebサイト改善に苦労されている方も多いのではないでしょうか。実際にどう分析していくかは、会社や組織によってケースバイケースであるものの、今回はユーザーセグメント分析についてご紹介します。

ユーザーセグメントとは

今回のソリューションについて具体的な話を進める前に、ユーザーセグメントについて簡単に書いておきましょう。そんなこと知ってるよという方は、飛ばしていただいて構いません。

端的に書くとユーザーセグメントとは、類似した属性や行動パターンを持つユーザーをグループ化することです。ユーザーセグメントを定義することで、特定の特徴を共有するユーザーグループに対して洞察を得て、マーケティング戦略をカスタマイズすることができます。これだけだと少し抽象的なので、ユーザーセグメントの具体例を少し出してみます。

属性に基づくユーザーセグメント
- 年齢層：10代、20代、30代など
- 性別：男性、女性、その他
- 地域：都道府県、国、地域など
- 収入レベル：低所得、中所得、高所得など
行動に基づくユーザーセグメント
- 購買履歴：特定の商品を購入したことがあるユーザー、リピーターなど
- サイト訪問頻度：頻繁に訪問するユーザー、稀に訪問するユーザーなど
- 行動経路：特定のページから入ってくるユーザー、特定のページに滞在するユーザーなど
興味関心に基づくユーザーセグメント
- 製品興味：特定の製品カテゴリに興味を持つユーザー、特定の製品に興味を持つユーザーなど
- コンテンツジャンル：特定のテーマやジャンルのコンテンツを消費するユーザー、特定のトピックに興味を持つユーザーなど

このように、ユーザーセグメントの種類は非常に多岐に渡ります。その中から、どのようなユーザーセグメントを指定して分析をするかは、会社や組織及びその状況によって様々です。

アウトプットイメージ

ユーザーセグメントについてご理解いただいたら、話を前に進めましょう。今回の最終的なアウトプットイメージは次の通りです。

スクリーンショット2024-04-0115.58.27.png

例として今回は、新規ユーザーとリピーターの2つをユーザーセグメントとして指定し、それぞれに対してユーザー数やコンバージョン数などの、基本的な指標の値をGoogleスプレッドシート（以下、スプレッドシート）に出してみました。後で詳しく説明しますが、Google Analytics Data APIで取得できるGA4のデータには、デフォルトで指定されているユーザーセグメントが色々あり、新規ユーザーとリピーターもそれらのうちの1つです。

そして構成図は次の通りです。

スクリーンショット2024-04-0915.12.16.png

構成自体は非常にシンプルで、Craft Functionsを起動してGoogle Analytics Data APIからGA4に関するデータを取得し、それを返したら成形してスプレッドシートに出力しているだけです。

注意点

前提として、次の点に注意をしてください。

GA4の基本的な設定は済んでいる前提で話を進めます
- GA4のタグ設置やイベント設定など、基本的なことはここでは紹介しません

手順

具体的な手順は、以下の通りです。

GCPプロジェクトでGoogle Analytics Data APIとGoogle Sheets APIを有効化する
Googleサービスアカウントを作成してjsonキーを取得する
サービスアカウントにGA4の権限を付与する
Googleサービスアカウントに対象スプレッドシートへの権限を付与する
GoogleサービスアカウントのJSONキーファイルの中身を Craft Secret Manager に登録する
Google Analytics Data APIを利用してGA4のユーザーセグメント分析レポートを作成するためのCraft Functionsを作成する

順番に見てみましょう。

1. GCPプロジェクトでGoogle Analytics Data APIとGoogle Sheets APIを有効化する

まず、Google Analytics Data APIとGoogle Sheets APIを有効化します。その利用にあたっては、GCPプロジェクトを利用する必要があります。

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適当なGCPプロジェクトを作成または選択し、[APIとサービス > 有効なAPIとサービス > APIとサービスの有効化またはライブラリ] からGoogle Analytics Data APIとGoogle Sheets APIを検索し、それぞれ有効化します。

2. Googleサービスアカウントを作成してjsonキーを取得する

次に、同一GCPプロジェクトでGoogleサービスアカウントを作成します。後にそのアカウントを使ってGA4の認証をします。

[IAMと管理 > サービスアカウント > サービスアカウントを作成] から適当な名称のアカウントを作成します。

スクリーンショット2023-08-1413.15.34.png

作成したサービスアカウントを選択し、[キー > 鍵を追加 > 新しい鍵を作成] からJSON形式のキーファイルをダウンロードします。

スクリーンショット2023-08-1413.16.12.png

このキーファイルの中身を、後でCraft Secret Managerに登録する必要があるので、取っておいてください。

3. サービスアカウントにGA4の権限を付与する

Google Analytics Data APIを有効化し、サービスアカウントを作成しても、それだけではGA4のデータを取得できるようにはなりません。GoogleアカウントにGA4の権限を付与するのと同様に、サービスアカウントにもGA4の権限付与が必要です。

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GAの画面で左下の歯車アイコン（管理）をクリックします
その中にあるアカウントのアクセス管理をクリックします
サービスアカウントのメールアドレスを入力して、権限に閲覧者を指定します

もし皆さんがGA4の管理者権限をお持ちの場合、ご自身でサービスアカウントへの権限付与が可能なはずです。しかし上の画面のように、他者への付与権限がないと言われた場合、管理者に権限付与を依頼してください。ちなみに今回は、GA4のデータを読み取るだけなので、権限は閲覧者で大丈夫です。

4. Googleサービスアカウントに対象スプレッドシートへの権限を付与する

Google Sheets APIを有効化してサービスアカウントのjsonキーを取得しても、個別のスプレッドシートに対して自由にアクセスできるわけではありません。スプレッドシートごとに、閲覧権限や編集権限を付与する必要があります。

スクリーンショット2024-02-1317.57.41.png

右上の共有をクリックします
Googleアカウントに権限を付与するのと同様に、サービスアカウントのメールアドレスを入力します
権限には、編集者を指定してください

5. GoogleサービスアカウントのJSONキーファイルの中身を Craft Secret Manager に登録する

Googleサービスアカウントの認証情報をCraft Functionsから安全に利用するために、Craft Secret Manager に登録します。

[Craft > シークレット] からシークレットを新規作成
[名前] に、わかりやすい名前を入力
ダウンロードしたJSONキーファイルの中身を [シークレットの値] にそのまま入力し、作成
シークレット名をメモしておく

6. Google Analytics Data APIを利用してGA4のユーザーセグメント分析レポートを作成するためのCraft Functionsを作成する

Craft Functionsのファンクションを作成します。作成手順は次の通りです。

[Craft > ファンクション > 新規作成 > テンプレートから作成] を選択
「 Craft FunctionsからGoogle Analytics Data APIを利用し、GA4のユーザーセグメント分析レポートを作成する 」というテンプレートを検索し[取得]ボタンをクリック
[反映] ボタンをクリック
[変数] タブで次の変数の値を設定する
- SERVICE_ACCOUNT_KEY_SECRET
  - 利用するGoogleサービスアカウントのJSONキーを登録したシークレットの名前です
- DAY_BEFORE_END_DATE
  - 集計の終了日から何日前の日付を開始日として使用するかを指定します
- SPREADSHEET_ID
  - 出力先となるスプレッドシートのシートIDです
  - URLがhttps://docs.google.com/spreadsheets/d/123456789/editの場合、123456789がそれに該当します
- SHEET_NAME
  - 出力先となるスプレッドシートのシート名です
- GA4_PROPERTY_ID
  - 集計対象となるGA4のプロパティIDです
  - GA4のホーム画面がhttps://analytics.google.com/analytics/web/?hl=ja&pli=1#/p123456789/reports/intelligenthomeとなっていた場合、123456789がそれに該当します
- [設定 > ファンクションの有効化] にチェックを付けて [保存]

これらの値は直接Craft Functionsのコード内に埋め込むこともできますが、こうして変数として指定することで、コードをいじらずとも変更できます。プログラミングに慣れない方でも、この形式なら間違って変な部分を編集してエラーが出てしまった、というようなミスを減らせるでしょう。

なお、テンプレートのソースコードはGitHubで公開しています。
craft-codes/craft-functions/ga4-user-segment-report at main · plaidev/craft-codes

ここから、Craft Functionsのコードで重要な部分について、かいつまんでご説明します。

const response = await analyticsDataClient.properties.runReport({
      property: `properties/${propertyId}`,
      requestBody: {
        dateRanges: [
          {
            startDate,
            endDate,
          },
        ],
        dimensions: [
          {
            name: 'newVsReturning',
          },
        ],
        metrics: [
          {
            name: 'activeUsers',
          },
          {
            name: 'sessions',
          },
          {
            name: 'averageSessionDuration',
          },
          {
            name: 'screenPageViews',
          },
          {
            name: 'bounceRate',
          },
          {
            name: 'conversions',
          },
        ],
        dimensionFilter: {
          filter: {
            fieldName: 'newVsReturning',
            stringFilter: {
              matchType: 'EXACT',
              value: userType === 'new' ? 'New' : 'Returning',
            },
          },
        },
      },
    });

この部分で、実際にGA4からデータを取得しています。fieldNameのnewVsReturningが、新規ユーザーとリピーターのユーザーセグメントを指定するものです。他にどのようなユーザーセグメントがデフォルトであるのかは、公式のドキュメントをご確認ください。そして指定されたユーザーセグメントごとに、ユーザー数やセッション数など必要な項目を取得しています。

あとは、Craft Functionsを実行するための設定も必要になります。今回は、KARTEで閲覧や購入など何かイベントが発生した際に発動するのではなく、1ヶ月か2ヶ月程度に1回の定期実行が一般的かと思われるので、その設定方法をご紹介します。ちなみに定期実行にしておくと同じシートでどんどんデータが上書きされてしまうので、比較のためにも実行したらその結果はコピーして別のシートとして保管しておくといいでしょう。

スクリーンショット2024-02-1318.25.41.png

Craft Functionsの設定タブを開きます
スケジュールを有効化し、cron形式（JST）で実行時間を指定します

cron形式（JST）についてここで詳しくは説明しませんが、例えば毎月1日の11時に実行したい場合は、0 11 1 * *と入力して保存してください。とりあえずすぐ動かして実行結果を確認したい場合は、1分ごとに毎回実行される* * * * *を入力してみてください。入力欄の下に例があるので、そんなに難しくはないと思います。

ここまでできたら、Craft Functionsを有効化して保存してください。

実際に動かしてみる

実際に動作を確認してみましょう。

問題なく設定できていれば、次のような表示が実現できるはずです。

スクリーンショット2024-04-0115.58.27.png

こうして見るとこの場合、ユーザー数は新規ユーザーの方が圧倒的に多いものの、平均ページ滞在時間はリピーターの方が圧倒的に長く、コンバージョン率も断然いいですね。これだけでも、得られる示唆は色々とありますし、ここから更に詳細な分析に繋げていけるでしょう。

おわりに

今回は、Craft FunctionsからGoogle Analytics Data APIを利用し、GA4のユーザーセグメント分析レポートを作成する方法について紹介しました。GA4は、ちゃんと活用できれば非常に便利なツールです。ユーザーセグメント以外にも、色々な指標や観点からWebサイトの分析ができるので、また別の方法も今度ご紹介したいと思います。

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