こんにちは、Customer EngineerのShinです！

2023年は、夏の暑い日々から突然木枯らしが吹き始めました。そんな時、人はどんな消費行動を取るでしょうか？
「寒くなってきたので、そろそろ鍋を食べようかな」「衣替えしようかな」「そういえばエアコン古くなってきたから書い替えようかな」なんて思い始めることは想像に難くはないでしょう。

人々の暮らしに関わるサービスであれば、天気情報をマーケティングに使うことも効果的な手段になります。

そこで今回は、気温や天候の情報を用いて、47都道府県ごとのユーザーにメール配信をする方法について紹介します。

想定するユースケース

ECサービスにおいて、気温がユーザーの購買にもたらす影響が大きいので、ユーザーデータと連携し、8月〜12月の間に気温が初めて10℃以下になった都道府県に対して、購買を促すメール配信を自動で実行します。また、ユーザー体験を損なわないように、1度送ったら送らないように配信頻度を調整することを想定します。（この記事で作った施策では作成していませんが、気候情報をもとにセグメントすることも可能です。）

全体像

処理の流れ

実現する処理の全体像は、以下の通りで、47都道府県の気温情報をCraftで取得しGoogleスプレッドシートに書き込んで、そのデータを整形し、KARTE Messageで配信するといった流れになっています。

アウトプットイメージ

最終のアウトプットイメージは、以下のように、気温と都道府県を変数として埋め込みマウンテンパーカーなどの寒い日に着る服装の購買を促すコンテンツです。

スクリーンショット0005-11-2817.41.51.png

利用するKARTEのツール・必要な知識

実装の手順

CraftでWeather APIを用いて天気情報をGoogleスプレッドシートに書き込む
1-1. Weather APIのAPIキーの作成
1-2. Googleスプレッドシートの雛形を作成する
1-3. GCPプロジェクトでGoogle Sheets APIを有効化してGoogleスプレッドシートに権限を与える
1-4. Craft Functionsを作成する
1-5. 定期実行のスケジュールを設定する
GoogleスプレッドシートをDatahubに取り込んで元データを作成する
天気情報とユーザーデータを使って元データを作成する
気温でセグメントしてフィルターリストを作成する
キャンペーンを作成する
1度送ったユーザーには送らないように配信頻度を調整する

順番に説明します。

1. CraftでWeather APIを用いて天気情報をGoogleスプレッドシートに書き込む

最初に、Craftと呼ばれるKARTEの機能についてご紹介します。CraftはKARTE内で発生するユーザーの状態の変化をトリガーとして、汎用のプログラムを実行する機能です。Craftで作成したプログラム（Craft Functions）を使うことで、社内外の様々なシステムとKARTEの連携がスムーズに実現できます。
参考：KARTE Craftとは

目指すGoogleスプレッドシートの完成形は以下です。

それでは、ここから、CraftでWeather APIという天気情報APIを用いて、天気情報をGoogleスプレッドシートに書き込む操作をしていきましょう。

1-1 Weather APIのAPIキーの作成

Weather APIは無料で天気データと地形データをjson/xmlの形で、取得できるapiです。

APIの実行にはWeather APIのAPIキーが必要です。Weather APIにSign upして提供されるAPIキーを控えておきます。

1-2 Googleスプレッドシートの雛形を作成する

Googleスプレッドシートを作り、1行目だけ固定しておき、タブの名前をweather_infoにしておいてください。

スクリーンショット0005-11-2817.49.17.png

1-3 GCPプロジェクトでGoogle Sheets APIを有効化してGoogleスプレッドシートに権限を与える

Craft Functionsからスプレッドシートのデータを読み書きするの記事を参考にし、「3. サービスアカウントに対象スプレッドシートへの権限を付与する」 というところまで進めてください。

1-4 Craft Functionsを作成する

サンプルとなるソースコードは、Craft FunctionsのテンプレートとしてGitHubで公開しておりますので、参照してください。

https://github.com/plaidev/craft-codes/tree/main/craft-functions/fetch-weather-api-write-spreadsheet

作成手順は次の通りです。

[Craft > ファンクション > 作成 > テンプレートから作成] を選択
都道府県ごとにWeather APIから取得した情報を含めてGoogleスプレッドシートに書き込みをする というテンプレートを検索し「取得」ボタンをクリック
「反映」ボタンをクリック
WEATHER_API_KEYに① Weather APIのAPIキーの作成で作ったAPIキーを反映
SPREADSHEET_IDに② Googleスプレッドシートの雛形を作成するで作ったGoogleスプレッドシートのidを反映
- idはスプレッドシートのURLから確認できます。URL：https://docs.google.com/spreadsheets/d/**ここがid**/edit#gid=1234
SERVICE_ACCOUNT_KEY_SECRETに③ GCPプロジェクトでGoogle Sheets APIを有効化してGoogleスプレッドシートに権限を与えるで作成したシークレットキーを反映
Functionを有効化して保存

補足
今回のサンプルコードでは、Craftで実行したその時間の天気情報を取得しているので、少し施策の幅が狭いのですが、過去1週間の気温情報を取得して平均を取るなどすると、より良い施策を作ることができるでしょう。

サンプルコードでどういった処理をしているのかを説明します。

今回、都道府県ごとに気温情報が欲しいので、都道府県名・ユーザーデータとjoinする用のlocation・緯度・経度を含んだ配列を用意します。

const LOCATIONS = [
  { prefecture: "北海道", location: "hokkaido", lat: "43.0352", lon: "141.2049" },
...

Googleスプレッドシートの最初の列を作成しておき、LOCATIONSの配列を回して、Weather APIを叩いてtemp_c（気温）・condition.text（天気）・緯度（lat）・経度（lon）を取得する関数を用意します。

ここまでで用意した関数を、使って実際にGoogleスプレッドシートに書き込む処理を実行します。（updateSsValues）

  await Promise.all(
    LOCATIONS.map((location) => fetchData({ location, rows, logger })),
  );
  await updateSsValues(
   sheets,
   `${SHEET_NAME}!1:${LOCATIONS.length + 1}`,
  rows,
);

ここまで出来たら、設定を開いてエンドポイントを作成し、そのURLにアクセスして実行してみてください。
少し待って、Googleスプレッドシートに反映されれば成功です。

1-5. 定期実行のスケジュールを設定する

自動で天気情報を取得したい場合は、スケジュールを設定すれば、定期的な間隔でCraftのコードを実行することができます。

スケジュールの設定については、こちらの Developer Portal > Craft Schedulerをご覧ください。

今回は、1分毎にCraftを実行させるために、スケジュールを* * * * *にしておきます。

スクリーンショット0005-12-0513.53.21.png

2. GoogleスプレッドシートをDatahubに取り込んで元データを作成する

「すべてのメニュー > Datahub > データセット」を開き、「テーブルを作成 > フェデレーションテーブルを作成」を選択します。

「1. CraftでWeather APIを用いて天気情報をGoogleスプレッドシートに書き込む」で作成したGoogleスプレッドシートをDatahubにフェデレーションテーブルとして読み込みます。

（参考：フェデレーションテーブルを作成する）

その際に、「自動型判定を有効にする」にチェックとオプションの読み取りをスキップする先頭の行数を1に設定して作成してください。

スクリーンショット0005-11-3013.22.04.png

3. 天気情報とユーザーデータを使って元データを作成する

2で作成したフェデレーションテーブルから配信するリストを作成していきます。

あらかじめ、以下のようにuser_idとprefectureを持ったデータをフェデレーションテーブルとして作成していますが、ここは本来であれば実際のサービスの顧客データになるので、必要に応じて変更してください。

ユーザーデータとWeather APIから取得してきたデータをlocationでjoinして出力しています。（メール配信用のダミーemailを作る処理を入れています。）

WITH weather_info AS (
  SELECT
    prefecture
    , LOWER(location) AS location
    , temp_c
    , tenki   
    , lat
    , lon
  FROM `prd-karte-per-client.shin_solution_blog_ae2a974f9e050db947a1a4084d40c534.weather_info`
)

SELECT
  user.user_id
  , CONCAT(SAFE_CAST(ROW_NUMBER() OVER( ORDER BY user_id ASC ) AS STRING),'@example.com') AS email
  , weather_info.prefecture AS prefecture
  , weather_info.tenki AS tenki
  , weather_info.temp_c AS temp_c
  , weather_info.lat AS lat
  , weather_info.lon AS lon
FROM `prd-karte-per-client.shin_solution_blog_ae2a974f9e050db947a1a4084d40c534.user` AS user
LEFT OUTER JOIN weather_info
  ON user.location = weather_info.location
ORDER BY user.user_id ASC;

これで、配信するもとになるデータを用意できました。

4. 気温でセグメントしてフィルターリストを作成する

「すべてのメニュー > Messageβ > リスト管理」を開いてリストを作成 > Datahubから作成を選択します。

配信対象をEメール・配信先カラムをemail・ユーザーIDの指定をuser_idにして保存します。

次にフィルターリストを作成していきます。

先ほど作ったリストの右上にある三点リーダーから「フィルタリストを作成」を選択します。

今回は、8月〜12月の間に初めて気温が10℃以下になったユーザーに対して、配信をすることを想定しフィルターリストを作成します。

条件設定をtemp_c（FLOAT）が10以下に設定して保存します。

スクリーンショット0005-12-0514.02.37.png

これでメール配信する対象のフィルターリストをSQLなしでセグメントすることができました。

5. キャンペーンを作成する

「すべてのメニュー > Messageβ > キャンペーン管理」を開きます。

コンテンツ
- 配信タイプを「メール配信」にします
対象ユーザー
- マスターリストを先ほど4で作成した、「気温が10℃付近のユーザー」に設定します。

アクション
- アクションを追加して編集ボタンを押します
ここで、埋め込み変数を使ってパーソナライズなコンテンツにしています。

詳しくはサポートサイトを参照ください。

埋め込み変数の設定
- {{PREFECTURE_JAPAN}}に prefecture
- {{TEMP_C}}にtemp_c
を設定します。

変数.png

「埋め込み変数の設定 > プレビューボタン」を押して、エンドユーザーに配信される内容がどういうものが確認してみましょう。

スケジュールの設定

今回は9月〜12月の間に初めて10℃以下になったユーザーに対して自動配信するので、

実行回数：繰り返し
実行間隔：毎日 10時 0分（月曜日〜金曜日）
開始日時：2023-09-01 6:00
終了日時：2023-12-31 0:00

という設定にします。
スクリーンショット0005-12-0514.05.26.png

6. 1度送ったユーザーには送らないように配信頻度を調整する

寒い地域で11月になったら常に気温が10℃以下になるエンドユーザーからして、毎日配信が飛んでくるというのは、体験がよくありません。
ですので、1度送ったユーザーには送らないように配信頻度を調整します。
（参考記事：KARTE Messageでユーザー毎に配信頻度をコントロールできるようにしてみた）

「すべてのメニュー > Datahub > 作成 > クエリコレクションから作成 > Messageの配信頻度をキャンペーン毎で制御する」を押して、「クエリを挿入」を選択します。

クエリの挿入ができたら、「パラメータ設定」を選択して、
抽出期間を2023-09-01 - 2023-12-31に
集計対象をメールに設定します。

スクリーンショット0005-12-0514.34.09.png

次に、配信しない対象をリストとしてキャンペーンからリストとして除外するように設定します。

「すべてのメニュー > Messageβ > キャンペーン」を開き、「5. キャンペーンを作成する」作成したキャンペーンを開きます。
「対象ユーザー > さらに絞り込む > 新しいデータを追加 > Datahubから作成」を選択して、上記で作成したクエリを選択して"除外対象のリスト"という名前にして追加します。

スクリーンショット0005-12-0514.38.33.png

以下の画像のように、リストを「次を除く」というのに変更します。
最後に右上の「配信予約」ボタンを押して配信を開始します。

スクリーンショット0005-12-0514.41.19.png

お疲れ様でした！
以上で、配信の頻度を制御した上で、気温が10℃になったユーザーに対して自動配信するのを設定することができました。

まとめ

今回は、Craftで都道府県ごとに気温や天候でセグメントしてメール配信する方法について解説しました。

作成した施策は、CraftでWeather APIを叩いたその時の天気情報をもとにセグメントしていますが、他の施策も柔軟に作成することができます。

例えば

雨や晴れなどの天候情報（コードの中のcondition.text）をもとに雨関連のユーザーに対して傘の購買を促す施策
過去1週間の気温情報の平均値を47都道府県ごとに計算して10℃以下なら厚手のコートの購買を促す施策
天気予報情報から逆算した施策
などWeather APIの叩き方やKARTE Messageのフィルターリストでセグメントする値を変えるだけでも施策の幅をぐっと広げることができます。

天気は人々の生活に大きな影響を与えるものです。ぜひCraftを使ってCX向上を実現してはいかがでしょうか？

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ユーザーの居住地の気温が10℃以下になった地域に KARTE Message で自動メール配信する方法を解説！